はたけに植わる舟

無駄を模索している

東京へ行き面接を受け、童貞を捨てるまでの話

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何でもあり、何があるかわからない街、東京。

地上から地下までをチャンスで埋め立てた街に人間が流通している。そのよくわからなさに浮かされた結果、一夜にして童貞を失った就活生もいる。具体的には、一夜とは50分だった。17000円だった。帰朝の夜行バスに揺られながら、今、フジファブリックの『東京』を聞いている。この曲はライブ中のミスをきっかけに生まれたのだとネットに書いてあったが、奇しくも今日、同じようなノリで私は貞操をどこかへやった。なるほどな。音楽が生まれ、童貞は失われる。”東京あるある” といった感じがする。それが空虚なものだったとしても、そこまでがテンプレという感じもする。

これから、その経緯についてここに記して、今日という日を弔うインターネット海洋葬といこう。ただ今日はもう疲れたので、以下後日記述。

 

筆記試験の通過通知を受けて数日後、私は東京行きの夜行バスに乗っていた。車内は4列シートの窮屈空間で、ろくに睡眠をとることができなかった。真っ暗ですることもなくて、仕方が無いから面接後から帰りのバスまでの時間をどう潰すか考えていた。偶然同じ選考を受けることになっていた友人と飯を食う予定はあったが、それだけではどうにも手持ち無沙汰と思われた。人混みを観光して喜ぶタイプでもないし、それはおそらく友人も同じだろう。

そこでふいに閃いたのが、風俗だった。面接後、友人と落ち合って唐突に「あ、俺風俗行ってくるわ」と言ったら面白いだろうなと思った。夜行バスでも深夜は深夜で、ちゃんと深夜のテンションだったのだと思う。私は企業研究よりもはるかに深い精研を発揮し、東京に着く頃には一通りの風俗情報に通じていた。

バスを降り、朝マックを食べ、風俗に電話した。書くには易いが、どの店、どの嬢にするかが難問だった上に、予約となると逃げがきかない心理的な難しさがあった。電話に至るまで2時間以上は尻込みしていたと思う。だから電話を終えた後で、我ながら大いなる一歩を踏み出した、と思うことになるはずだった。

「もしもし。あの……〇〇さんという方で、明日の予約をしたいんですが。ネットにはTELとあったので」「あー。TELというは原則的に埋まっている状態でして、TELと×は要するに予約できないという意味なんです」「あ、そうなんですか」「はい」「分かりました失礼します」

バカヤロ。TELってなんだ、テレフォンだろうが。〇と×とTELがあって、どういうわけでTEL=×の意味合いが成立するんだ? なんなんだ一体。

全身にアホクサ音頭が流れ始め、 情緒が地面にめり込んだ。発信するまでにつぎ込んだエネルギーと同じ分だけ気が萎えた。何をそんなに、と思われるかもしれないが、事を起こすこと自体、私にとってはもうビッグなイシューだった。こんなことなら初めから変な気を起こさなきゃ、と考える小心者なわけ。

目当てが予約できないのならもう仕方が無い。残エネルギーでは”他を当たる”ことも能わず、頭を無にして一度現状をリセットした。私は面接を受けに東京へ来たのだ。面接は明日、今日は東京に在住する兄のところで前泊する。するつもりもなかった余計なことがおじゃんになっただけで、本来の目的は難なく達成させられる。むしろ、面接帰りに風俗へ行くとか気の違えた奇行をせずに済む。明日は友人と適当に観光して帰ればいい。それでいい。それがいい。

そんな風に自分を落ち着けながら、東京を歩いた。気づくと一時間半以上歩いていた。履き慣れない靴で大きな荷物を持ちながら歩いたもんだから、盛大に靴擦れした。早稲田で靴擦れが臨界し、そこからは電車で兄宅へ向かうことにした。ちなみに早稲田は私の滑った大学がある街だったが、それ以上歩けなかったので唾を吐きにはいけなかった。

翌朝、仕事へ向かう兄と発つ。せっかくだし観光に使え、と兄に一万円を頂戴した。朝帰りし酔いに嘔吐し夜にはまた合コンへ行くような人間はやはり豪気だ。引いたDNAが強い。私は再び朝マックを食べ、きたる面接へ備えた。

面接は和やかに終えた。最後の質問で、宝くじで10億円当たったらどうするか聞かれ、妙案もなかったので適当に答えたら「この質問すると、だいたいみんな親にあげるっていうんですけどね」と面接の人が笑った。私は手を打って「全く頭にありませんでした」と笑った。「確かにそれいいですね。半分あげます」と言うと、「半分あげてください」と面接官もニッコリ。みんな笑顔で良かった。面接は落ちた。

その後、友人と落ち合い、面接について話しつつ秋葉原に向かうことにした。暇つぶしにメイド喫茶を提案したら、じゃあそうするかという感じでお互いまずまずの乗り。双方面接の疲れからか、脳機能がまるで働かず逆方向の電車に乗ったり、無意味に改札を出たりして無駄足を踏みまくった。ようやく岩本町に着き、そこからアキバへ歩いて行くか、といったところで私は真っ青になった。

財布がない。

そんな馬鹿なとポケットからバッグまでひっくり返したが、確かにない。あわわカード類に免許証に鍵に兄からもらった一万円、あわわ水の泡……。損害と手間を想像し途方もない絶望に包まれる感覚は想像に易いと思う。人生のどん底とはつまり財布をなくしたとき。駅員さんに話をしてから、心当たりのあるところに戻って探そうとホームへ降りる。そして、にわかに気づいた。手提げバッグの横のところがややもっこりしている。よく見ると財布がのぞいている。

いや、財布。あるやん。

友人、駅員さん。みんなごめん、そしてありがとう。降ってわいた絶望に、わいて降った光明。なくしたときがどん底なら見つけたときは頂天だ。あったはずの手間と損害が一撃で粉砕され、さらになくしたはずの一万円を手に入れた。つまり、兄からもらった一万円は財布の紛失と発見によって二万円に化けた。これ以上のことはない。私は思った。この二万で風俗にいこう。

神風が吹くとはこういうことなのかもしれない。友人とは秋葉原で別れ、私は昨日の店とは別の店に電話し、パネルをろくに見もせず適当な嬢を予約した。そしてその数十分後には、私は童貞を捨てていた。

読者が読みたいのはおそらくその内容だと思うけれど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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嘘。面白くない冗談。ちなみに内容も大して面白くない。

まず吉原のソープなので最寄り駅から送迎があった。前日に足裏をやられているのでとても助かった。聞いていたナンバーの車に乗り込もうと近づいたら中からおっさんが出てきてびっくりした。おそらく事を終えた利用客だと思われる。古めのビルの店内はそれなりの小汚さで、通された待合室にはまたおっさんがいた。

程なくして嬢と対面したが、外見は別にどうもこうもなかった。良い意味で普通だったし、そもそも私自身人の外見にどうこう言う立場にない。まあ簡単に言えば、ぱっと見25前後のむっちりめの背低め。あと普通。当日の夕方に電話したものだから、それ相応のいわゆる地雷に当たらなかっただけ安心した。料金は格安50分17000円。流れとしては、なんか適当にしゃべり、脱いでシャワーして湯船入って歯磨き、うがい、プレイ。うがいはイソジンみたいな消毒液がコップ1杯分もあって、鼻腔がやや辛かった。

ぶっちゃけ、ほぼすべてのプレイが想像していた程度のことだった。悲しいくらいに想像通りだった。ただ乳首をなめられるやつだけは想像以上だった。乳首とかなんのためにあんねんとか思っていた以前の己を恥じた。あれやこれややってる間に、入れるねと言われて気づいたら私のナウマンゾウ(仮称)はずっぷりと入っていた。私は歴史的瞬間を迎えた。中は確かにあったかかった。

しかし、どうだろう。思えばここまで長い道のりだった。零戦練磨の世の非モテたちほどの年季ではないのかもしれないが、セックスというものに長く触れないでいたことで、その行為を聖域化し、理想化しすぎていた内面があったのだろうか。あるいは、童貞という社会的レッテルに鉛のような重みを感じていたのか。何かから解き放たれた感慨を私はどこか探していた。私の上にまたがる女の子を眺めながら、童貞を失った代わりに得た物を探していた。彼女は申し訳程度の喘ぎ声を上げながら、せわしなく乳酸の溜まりそうな運動をする。形を入れた形だけの何か。私は結局、ナウマンゾウを中に入れたままいくことができなかった。そして半ば急かれるように手でしごかれて、射精という名のピリオドを打った。サービスを終え感じたことは、あの空間には一厘の感慨もなかったということだった。脱してなおも、心が童貞。

終了後には軽いアンケート調査があった。接客態度だとか、サービスの質を問うものだ。良い・普通・悪いなどの評価軸があり、私は片っ端から”普通”に丸をつけていった。またサービスを受けたいかの質問には”いいえ”と印した。おそらく、私が再び風俗を利用することはないだろう。それはそれとして、100点満点で点数をつける項目だけは、100点と大きく書いて店を出た。厚意の送迎は断った。

 

以上が主な顛末となる。それからは特筆すべきこともなく京都へと無事に帰った。強いていえば、吉原のキャッチに「もうやってきたので」と満面の笑みで断ったら「もう一発!」と元気に返されたことと、自宅の最寄り駅で謎のマイルドヤンキーに遠距離かつ小声で絡まれたことくらいだった。返事はしなかったけれど、朝6時にもならない時間に起きてて偉いと思った。

何か自分を変えなきゃ、と例えば就活をきっかけに奮起したとか、あるいはどうしてもしたかった念願のセックスだ、なんてことではなかった。音楽とは常に葛藤から生まれるべきだという道理もない。ある種の悪乗りから生まれた『東京』のように、オナニーのような悪乗りで捨てられた童貞があったというだけの話。何から何まで空虚だった体験から得た物があるとすれば、それは乳首の快感と嬢からの忠告か。終わった後、嬢に「あまり強く自分でしすぎると、女の子でいけなくなるよ」と諭された。実感のない生知識としては聞いたことがあったけれど、なるほど、どうやら私も危ないらしい。ひっくるめ総合して、つまりはチクニーでいけるようになれば解決するように思われる。そういう道を神に示されたわけですね。

そういえば、あの時、会話の流れで嬢に好きな音楽を聞かれた。私は「フジファブリックとかサンボマスターとか」と答えたら、「どっちも知らないw」と笑われた。最近はやっぱりあいみょんらしい。

そんなところです。一応カメラを持っていったのですが、なぜか一枚も撮らなかったためにこういうスタイルになってしまいました。さぞ読みづらかったかと思いますが、最後に一言、バチッと決めて終わろうと思います……

 

 

 

 

 

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おわり